夢の中へ
世はなべてことも無し、ねえ、と俺は学校に向かいながら呟いた。
今日ニュースに出てたどっか何億光年か離れた星の代表が言っていた言葉だ。地球人のレベルに合わせて姿を変えてきてくれていたらしく、その格好はまるきり普通のおっさんのそれだった。
確かに世は平和だ。
どっかの星と惑星間戦争になることもなく(そんなことになったら圧倒的な技術の差で我々の地球はあっという間に植民惑星になっていただろうが)、未来からやってきた機械的人間が町を破壊するでもなく(今日も夜は未来人が出した手記に沿って『未来の予想』なる番組をやるそうだが、CMで見たところ今現在とそう変わっているようには見えなかった)、エスパー軍団が普通人たちに範囲を翻すこともない(たまに空を飛んでいる超能力者を見ると実に羨ましくなる。だがあれは疲れるのだろうか)、世の中は平和だ。
まったくもって普通の日常である。しゃかしゃか自転車こぎながら、俺は男子はブレザーで女子はセーラーという校長の趣味なんだかどうなのか、という同じ高校の生徒たちを追い抜いていく。
平地に建てられた北高に辿り着き、自転車置き場に自転車を置く。徒歩でも登校できる距離なのだが、俺としては登校時間を少しでも短縮することで起床時間を少しでも遅らせたいわけだ。まあこれも普通の考えだな。瞬間移動能力がありゃいいと思っていた時期もあったが、あいにく高二も終わりに近付いたというこの年になるまで能力の発露すらない。誰かが落っことしたらしいペンケースがふわふわと空中を漂っていく。全く便利なもんだね。
教室に入ったらハルヒはすでに来ていた。ホームルームの時間が近いからか、窓際の一番後ろ、すなわち俺の真後ろの席に座って窓の外を見ている。
よお、と声を掛けると、ん、と挨拶にもならない返事が返ってきた。こちらもおはようございますと言ったわけではないからおあいこだが。そもそも俺はそんなキャラじゃない。そんな敬語が似合いそうな男を俺は一人しか知らん。いや、知ってるわけじゃないのか。
「今日もなにも面白いこと無いわ」
そうかね。日常そのものが驚きに溢れてはいないが、面白そうなことは世界のあちこちで起きてるがな。今日は全世界初、ユニコーンの繁殖に成功したとのニュースがやってたぞ。
「あんなの普通よ。なんだかなあ」
ハルヒはアンニュイなため息を吐いてみせた。この女の機嫌は浮き沈みが激しい。浮かれているときは太陽が生まれたときのようなまばゆい笑顔を見せるというのに、デフォルトの顔はこの仏頂面だ。
「なんだかなあ、と言われても困るが」
「知ってるわよ! でも、なんか、前はもっと楽しかった気がするのよ。なんでだろう」
俺に聞かれてもな、と答える前にチャイムが鳴った。岡部が入ってきたのに反応して前を向くと、ハルヒがもう一度漏らしたなんだかなあ、という声が聞こえてきた。
一限目は古典だった。お決まりのように眠気が襲ってくる。
言い訳になるが、最近になるまで毎回授業中に眠っていた訳じゃない。だが、とある特定の夢を見るようになってからずっと妙に眠いのだ。なんだろうな、一日の半分以上は寝ている気がするぞ。そしてその睡眠ほとんど全てで夢を見ている。
授業中ずっとそんな感じだから、俺の成績は下降の一途を辿っている――わけではなく、実際授業を聞いても聞かなくてもあまり変わりはない。こういうことを言うと特に谷口あたりにやっかまれるからあれなのだが、俺は何かが理解できなくて困った、という経験がない。よって授業は教科書の補足に過ぎず、授業後残された板書の跡を見ればどうとでもなるというわけだ。たまにそんな自分に違和感を覚えることがあるが、なんでだろうな。俺は生まれてこの方こうだったはずなのに。
ああ、そんなことを考えている間に徐々に目蓋は落ちてくる。
すまん、古典の教師よ。だが仕方ないんだ、なぜならば。
――眠りの淵で、古泉が呼んでいる。
「おはようございます」
「よお」
なぜか毎回、古泉という名の長身・イケメン・美声と三拍子揃った男は俺にそう言う。夢の中なのだからその挨拶は間違っちゃいないか、と突っ込んだことがあるのだが、さらりと流された。
会ったこともないのだから当然知っているわけもなく、見たこともない男だというのに、俺はなぜだか初めてこの夢を見たときからこいつの名前を知っていた。こいずみ、だ。
この夢は何もない。ただクリーム色っぽい空間が延々と広がり、その中にぽつりと俺と古泉がいるという、フロイト先生が検証したらどんな夢判断が下るのか多少興味がある。だがかのフロイト先生は幽霊学者として有名人の夢を見るのに大忙しで、俺ごときにかまっているヒマなどないだろう。
そして俺たちは何をするでもなく、ただ毎回会話を交わしている。
「今は授業中ですか?」
感心しませんねと古泉が言う。どの口がそれを言うか。
「お前が呼んでいるんだから仕方ないだろう」
こいつは口から生まれたんだと俺が勝手に信じている古泉が、珍しく言葉に詰まった。
「……恐縮です」
そうして大袈裟な身振りで頭を下げてみせる。
今日からお前をオーバーリアクションの王子様と呼んでやろう。
「遠慮します」
さすがにそれは嫌だったのか、すっぱりと切り捨てた。
「そういえば、」
夢の中だから話題は唐突でも全くおかしくない。
「俺はお前と話していると、たまに水の中にいるような気になる」
だが古泉は明らかに面食らった顔をして、それからその表情を陰らせた。
なんだなんだ、どうした微笑み貴公子。
「息苦しい……という意味でしょうか」
ああそういう意味に取ったのか、すまんな古泉。
「違う。なんというか……懐かしい、というのか、なんだろうな」
俺にもよく解らないんだ。
そう言うと、古泉はあからさまにほっとした顔をした。
どうかしているのかもしれない、と思う。俺の言動に一喜一憂する古泉も、その表情の変化を見てちょっと焦る俺も。いやいや落ち着け、相手はただの夢の登場人物だ。
「もう一つあるんだが」
口は勝手に動いていた。夢の中ってのは恐ろしいね、なんでもかんでも口から出ちまう。
「はい、なんでしょう」
にこり、と古泉。
「ここにいるのって、お前だけなんだよな?」
今度は面食らった顔ではなく、すっと笑顔が抜け落ちた。なんだなんだ、見たことがない反応だ。
「……ええそうです、僕だけですよ」
「そうか。なんだかたまに、もう二人ぐらいいるような気分になるんだ」
おかしな感覚だと自分でも解っているが、それがはっきりしない。曖昧なのが夢の特権のようなものだと思うのだが、どうにもこの夢は今までずっと自分が見てきたそれとは方向性が違うような気がする。
古泉は思案げに頷き、そうですかではそろそろ、と全く解らないことを呟いていたが、それを問いただすより早く別れの合図が来た。俺が目覚めるのだ。
顔を上げた古泉は、いつものきれいな微笑みを作って見せた。
「お休みなさい、また」
そしていつもの挨拶をしてみせて、薄れ行く景色の向こうの古泉がどんな服を着ていたか思い出せない自分に気が付いた。
ピピピ、と確実に注意を喚起するような電子音が教室に響いていた。これのせいで俺は夢から覚めることになったというわけか、やれやれ。
教師は咎めるような真似はしない。それはそうだろう。
発信源である国木田が立ち上がってそれじゃ失礼します、と教師に頭を下げた。全く大変だな、ヒーローってやつも。国木田は我が国公認のエスパーであり、人命救助などに広く関わっているらしい。働く超能力少年だ、と思い、そのフレーズに何故か覚えがあった気がしたのが疑問だった。
中学の頃から国木田は働いていたのだからテレビか何かで聞いたのだろうと思ったが、どうにももやのような感覚は晴れそうになかった。
それから授業中に寝ることはなく、俺は珍しく優等生的聴講態度を取ることとなった。国木田の分もノートを取っておいてやるかという気まぐれが働いたのもある。
放課後はハルヒと連れ立って分岐点まで帰り、それから一人で家まで自転車をこぐ。ハルヒと下校を共にするのはあまりあることではない。こいつは何かしら自分の思いつきがあるとホームルームが終わると同時に走り出すからだ。別に一緒に帰らなくてもいいのだが、教室から一緒だとなんとなくだらだらと帰ってしまうな。
そっから先は特に何もなく、未来予想とやらの番組は肩すかしで、俺はさっさとベッドに潜り込んだ。
「よお」
「おはようございます」
珍しく俺の方が古泉に声をかけるのが早かった。何やら思案顔だった古泉は、一瞬にしてもう見慣れた笑顔へとシフトチェンジする。相変わらず見事なもんだね。
「……今日は、」
だが、言葉につっかえた。表面上は取り繕っても内面はそうもいかないってか? ああどうして俺は夢の中でまで他人の分析してるんだろうな。よく解らん。というか最近、夢と現実の境目が曖昧になってきているようで微妙だね。俺としてはリアリズムに生きたいところだが。
「ゲームをしませんか」
「ゲーム? オセロでもする気か、でもここには何にもないぞ。お前、ひょいっと空中から取り出せたりするのか?」
古泉は、見間違うことなどできないほどぎょっとした。目を見開いて、穴も開けよとばかりに俺を見る。おいおい、今日のお前は精神安定がなっていないにも程がある。そういえば、俺は何故オセロなんて口にしたのだろうか。
「残念ながらそれはできませんね」
何かに腰掛けているのに、古泉はそう答えた。実際古泉が何に腰掛けているのかを俺は知らない。なんでかって、目に見えないからだ。古泉ははっきり言って空気椅子としか思えない体勢でこの何もないところにいるので、たまに笑いそうになる。
「僕の名前を当ててみる、というのはどうでしょう」
「名前?」
そういえばこいつの名前を聞いたことはなかったな。何故か名字が古泉であるということは夢の最初から知っていたが。考えてみれば妙な話だ、会ったこともないのに知っていた、なんて。そしてフルネームね、うん、知るのも悪くない。
「ヒントは?」
「残念ながら」
首を横に振った。無理を言うな。
「何もないところから名前を当てるなんざ、俺にはできんね」
俺はエスパーじゃないんだ、そう言うとそうでしょうねと古泉は肩をすくめた。
「あなたは異能者であったことはない」
そりゃそうだ、俺は生まれてこの方一般人街道爆走中の身だ。
しかしノーヒントとはいかにもフェアじゃない。
「チャンスは一回、宿題にしましょうか」
古泉が手のひらを上にして片手を上げると、ゆらりと夢が揺らいだ。え、起きるのか俺は。
「待て、古泉……」
「よく考えてください、ヒントは、あなたですよ」
夢の終わりに古泉の「お休みなさい」を聞かなかったのは初めてかもしれない。ぐらりと揺れる視界と夢の最中で、俺はそんなことを思った。
その後すぐに目が覚め、普段通りの時間であったことには驚愕した。普段はもっと長らくくっちゃべっているのだが。夢の中の時間感覚なんぞアテにならないものではあるが。
とにかく朝起きたら虫になっていることも超能力者になっていることも妹が触手になっていることもなく、世界は昨日寝る前と全く変わらなかった。今朝のニュースではアトランティス大陸でまた実験失敗の報が流れていた。懲りないな、大昔そのせいで国ごと海に沈んだってのに。しかしそのまま海中で長らく生活していたというのだから凄い。
いつも通りに登校し、いつも通りに授業に望んだ俺だったが、なんたることか今日は全く眠気が襲ってこなかった。古泉に詳しい話を聞きたかったというのに。とにかく眠れないものはしょうがなく、俺は授業を聞き流しながら古泉提案のゲームの内容である、あの男の名前について考えていた。
古泉の名前ねえ、男の名前なんだから、裕とか圭一とか……悟郎、結城……うーむ、いまいちピンとこないな。大輔、お、これはちょっと近いか?
なんだろうな、見た目感じではきっちりした感じなのに、ひらがなで呼ぶとちょっと丸いような、そんな感じの名前が似合いそうだ。名前なんだから似合う似合わないではないような気がするが。
孝太朗、ダメだこれでは読みが以前の首相の孫になってしまう。友和、義彦、博之……違うな、なんとなくだが四文字ではないような気がする。三文字で……なんだろうな……。
古泉古泉、と名字の方をこねくり回してみてもあまり変わらない。古泉司、古泉翼、古泉拓也、どれもしっくりこないな。
なんぞと悩んでいるうちに授業は矢のごとく過ぎ去り、気が付けば昼休みだった。
今日は出動がなかったらしい国木田と、谷口が弁当を持って集まってくる。大抵この三人で弁当タイムとなるのが常だった。
「キョン、今日は寝てないけどぼーっとしてるね」
国木田がちまちまと細かくしたおかずを箸で運びながら言った。相も変わらず小動物のような同級生だ。
「ああ、ちょっとな」
「さては好きなヤツでもできたかー?」
ニヒヒ、と笑っているのは谷口だ。毎度のことながら下世話なことだが、男子高校生よりも男子高校生らしい。宇宙人の調査員としては多分満点くらいもらっているんだろう。この潜伏能力には感服してもいい。
「俺は最近よう、はまってるグラビアアイドルがいてな……けどよ、やっぱりアイドルは俺だけのものにはならないだろ」
「アイドルでなくても谷口のものになるとは限らないけどね」
これだ。これが宇宙人と超能力者の会話だなどと誰が信じるだろう。谷口、お前は本当に素晴らしい現地調査員だ。だが染まりすぎだと思うのは俺だけか? あと、地球の勉強は難しいなーとか言っていつも赤点スレスレなのはいいが、その程度の科学力しかない星でも地球に来れるとはいい時代になったもんだな。
俺はエビフライを飲み下し、二人の会話に加わった。昼休みぐらいは名前のことを忘れてみたほうが案外、ぽんと答えが出てくるかもしれんからな。
「おはようございます」
「よ」
さて、今夜もまたこの夢なわけだが。俺が答えを用意しているかと訊かれれば、答えはNOである。結局考えあぐねて眠れなくなることを恐れ、俺は行き当たりばったりに賭けることにしたのだ。そもそも最初の古泉が当たっていたのだってこいつの顔を見てぽんと浮かんだ呼び名だったのだから、こいつから離れたところでいくら考えていてもらちがあかない、という結論に達したのである。
「どうですか? ゲームには勝てそうですか」
「それだがな、どういうルールかを聞いてないな」
「簡単ですよ、あなたが僕の名前を当てられたら勝ち、当てられなかったら負け」
それが俺の勝ちなのかお前の勝ちなのか言わないところがずるがしこいな。普通に考えれば俺の勝ちなんだろうが。
「慎重にお願いしますね、チャンスは一回ですから」
「それで……負けたらどうなる、とかあるのか」
これが気になるところだ。どうにも古泉の様子からして、ただの暇つぶしではないように思えたんでな。なんというか、昨日とはうってかわって静かーに微笑んでいるのも気にかかる。
「それはお教えできません」
「そんなのフェアじゃないな」
「知ってしまったらあなたはずっと答えてくれないかもしれないじゃないですか」
そんなに重い罰があるのか、このゲームの負けとやらには。
まあ……だが、正直な話俺は負ける気はさっぱりしなかった。なんだろうな、このくそ度胸とでも言うべき落ち着きは。俺の口の方が、多分頭よりも知っているはずだ。何故だかは解らんが。ヒントは俺だと古泉は言った。それは多分、答えだ。
「……後悔はしませんか」
「何の話だ?」
「僕は覚悟はできています。でも、あなたがどうかは僕には解らない」
「おい」
「後悔しませんか?」
古泉はもう一度同じ言葉を口にした。
後悔ね、後悔なんてのは後からするもんだ。そしてこの単語が、例えこの夢から覚めるためのワードだったとしても、俺は躊躇したりはしないのさ。古泉の口から、俺の出した答えが正解であるという反応が知りたかった。それだけだ。
「俺を信じろ、……一樹」
かちり、と何かが動く音がした。
それはパズルのピースがはまる音にも似ていたし、時計の針が動くようにも聞こえたし、チェスの駒とチェス盤が触れあうような音にも思えた。
ふわりと羽毛のような感触と共に古泉に腕を掴まれた。
接触したのは初めてだ。なにせ、今まで俺と古泉の間には見えない壁のようなものがあって、二人とも一定の距離から近づけなかったんだからな。だが古泉は易々とそれをすり抜けて、俺の腕を引き寄せて、一言。
「……つかまえた」
何がだ、どうなってる――と、口にすることはなかった。
ぴしりと空間がひび割れる音がして、俺は夢が終わるのだと理解した。
「……あ?」
目を開けたら、ある意味見慣れた、見慣れてしまった天井が広がっていた。
「おや、起きてしまいましたか」
そして見慣れた爽快フェイスが横にある。見飽きた、でないところが忌々しい。
「……あれ? 俺、何してたっけ?」
あー、この布団に触れる感触からして上半身が裸なのは間違いないな。ついでに頬杖ついて横向きになっている古泉の肩も裸だ。
「忘れてしまわれたのですか?」
熱い夜を過ごしたじゃないですか、とずいと顔を近づけられて後方に引いた。
そうなんだろうなとは思っていたが……寝起きで頭がぼーっとしているな。若年性健忘症で無いことを祈るぜ。
「しっかりしてください、明日は朝比奈さんと長門さんとピクニックに行く予定だったではないですか」
はっ、そんなことまで忘れようとしていたとはなんということだ。
「朝比奈さんのカップケーキは均等に分けるんだぞ」
「当然ですね」
朝比奈さんは明日のためにカップケーキを作ってきてくださると約束してくださったのだった。その分大変だろうということで、珍しくも長門が飲み物の調達を申し出た。俺たちはレジャーシートだとかその辺のかさばりそうなものを持っていくことになっている。朝比奈さんのカップケーキ、きっと天上の味がすることだろうな。
「……ん?」
「どうされましたか」
体の具合でも、と気遣ってくれるのは有り難いがそれならもう少し手を抜け。いやそうじゃなくてだな。
「なんか……もう一人いなかったか?」
古泉の空気が一瞬止まって、まばたきする間に動き出した。
「鶴屋さんは明日は用があるそうですし、あなたのご友人も誰もお誘いしていないはずですが」
「いや、そうじゃない……」
なんだろう、確かこういうのを率先としてやっていた誰かがいたような気がするんだが。気のせいか? 我らが零細文芸部には部員は四人しかいないよな。文芸部というか読書+ボードゲーム+家事研究会な気がしないでもないが。
「疲れているのでは? まだ遅いです、寝ていてください」
「そうだな、きっと気のせいだ」
ついでに疲れさせたのはお前だ、と睨むとははすいません、と欠片も思っていないような笑顔で返された。
ああもういい、相手をしていると余計疲れる。
目を閉じると、意外にも眠気はすぐに訪れた。
古泉が不必要に背中を触りながらお休みなさいと告げてくるのに、おやすみと返すのが精一杯だったくらいだ。だから、古泉が何やら呟いているのは聞こえなかった。
「お帰りなさい……やっと、取り戻しました」
「ちょっと、キョン! 何やってるのよ、こっちよこっち!」
夢の中で怒鳴るな。あれ……お前、誰だっけか。
End.
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